File No.14「ブレンドホップ」
数回にわたってホップについて説明してきましたが、ちょっと変わり種の話をしましょう。
たま〜に出てくる【ブレンドホップ】についてです。
ホップは基本的に“単体”で使用されます。シトラ、シムコー、センテニアルなど、数百もの“種類”が存在します。
しかし、それに混じって「ブレンドしたホップ」が使われることがあります。
これは、「単一ホップでは得られない“複雑さ”“一貫性”“再現性”を提供」するものとして、特に香りづけの目的で使われます。
代表的なものを見てみましょう。
🔹Cryo Pop™(Yakima Chief Hops社)
• 概要:「Cryo Hops」の技術を使って“香りの爆発力”を狙った香気設計型ブレンド。元は「Trial 301」と呼ばれてた。
• 構成ホップ(非公開だが、香気分析から推定):
• Mosaic
• Simcoe
• Citra
• Sabro
• 目的:チオール、エステル、テルペンに富んだ香り特化型
• 香りの傾向:トロピカルフルーツ(パッションフルーツ、マンゴー)、シトラス、ピーチなど
• 使用例:DDH IPA、Hazy IPA向け。Cryoの派手さを最大化したいときに。
🔹Hopsteiner Experimental Blends(ex. Sultana Blend)
• 概要:Hopsteiner社が開発する試験的な香味設計ホップ群。商品化前提のトライアルとしても出てくる。
• 構成:50% Nugget、25% Zeus、25% USDA 19058m
• 香りの傾向:ブレンドにより様々(柑橘、パイナップル、松、スパイスなど)
• 使用例:新しいアロマの探求や限定醸造用
🔹Trident™(Hopsteiner)
• 概要:3種の人気ホップを最適比率で配合した設計型ブレンド
• 構成ホップ(公表):
• 3種の“香り系ホップ”(具体名非公開) 推定では:
• Citra系(シトラス)
• Mosaic系(トロピカル)
• Experimental系(新種香気)
• 目的:バランスの良いジューシーさと少しのパイン
• 香りの傾向:トロピカル、柑橘、レッドベリー
• 使用例:Hazy IPAやDDH IPAなど、ジューシー系のベースに
🔹Zamba™(BC Hop Company)
• 概要:アロマ特化型の香気ブレンドホップ
• 構成ホップ(非公開):
• Zappa系 or Sabro系の香り傾向が強い
• パッションフルーツ、マンゴー、柑橘、キャンディなどから
• 推定構成:Zappa / Idaho Gem / El Dorado あたりが軸か?
• 香りの傾向:オレンジ、キャンディ、トロピカル、微かにシトラスパイン
• 使用例:NE系、フルーツ系のアロマ付加
これらは共に大手ホップ供給会社で、彼らの“開発力”は、さすがビール大国アメリカの象徴です。
他にもある意味特殊なブレンドホップがあります。
🔹Mosaic Incognito® Blend
• 概要:液状ホップ「Incognito®」の中でMosaicを主としたブレンド。煮沸やワールプールで使用しやすい。
🔹Veteran’s Blend(Yakima Chief Hops)
• 概要:退役軍人支援プロジェクトで選定されたブレンド。売上の一部が支援団体に寄付される。
🔹Pink Boots Blend(Yakima Chief × Pink Boots Society)
• 概要:女性醸造家の支援団体「Pink Boots Society」が選定する毎年変わるブレンドホップ
ところで、CTZというホップがあります。一部の解説に「Columbus、Tomahawk、Zeusを混ぜたもの」と書いてあるものがありますが、厳密には間違い。
この3種は、実質的には同一品種で、商標の違いしかありません。そこで、この3種を“呼び名違いの集合名”として扱っている、という事です。
つまり、ColumbusもCTZも結局は同じもの、でも
• Columbus = 品種名
• Tomahawk = ブランド名(Hopsteiner登録商標)
• Zeus = 別品種説もあるが、ほぼ同じものとして扱われることが多い
ということです。
なんか複雑ですね(笑)
ホップの世界は、やっぱり奥が深いですね。
あまり多くのホップを使わずに、ある意味冒険をしないで、ボイル周りでホップワークが
多いわたってとしては、ちょっとついて行けない感じですが、それでもいろいろあって楽しいですね。