File No.13「ホップのかたち」
ホップって、そもそもどんな“かたち”で使われてるかご存知ですか?
ビール好きでも意外と知らない人が多いんですが、ホップにもいろんな“フォーマット”があります。
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🌿1. ホールホップ(そのままのかたち)
摘みたてのホップを乾燥させたもの。まさに「葉っぱ」です。
香りはフレッシュですが、扱いづらく、大量に使うとめちゃくちゃ場所を取ります。
➡︎ 昔ながらのベルジャンや英国エールで使われることが多いようです。国産麦酒風の“雑草汁”にも使われます。
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🌿2. ペレット(圧縮タイプ)
ホールホップを粉砕してギュッと固めたもの。
今のクラフトビールでは最も一般的なホップ。香り・苦味・保存性・コスパ、全部バランスが良い優等生。
➡︎ IPAのほとんどはこれを使っています。
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🌿3. Cryo(低温粉砕・濃縮タイプ)
ホップの「香りの成分(ルプリン)」だけをギュッと抽出してペレットにしたもの。
香りはめちゃくちゃ派手ですが、苦味成分が少ないので、Hazy系IPA向きかもしれません。
➡︎ NE系やDDH系で「香りだけブーストしたい」時によく使われます。
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🌿4. インコグニート(液体ホップ)
最近注目の“液状ホップ”。
ペレットの粉っぽさやロスをなくし、効率的に使えるように進化したフォーマット。
煮沸やワールプール時に使いやすく、香りが安定します。
➡︎ 海外では導入が進んでいて、今後もっと主流になるかも?
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🌿5. LUPOMAX®(濃縮ペレット)
ルプリンだけを抽出してムダを削ぎ落とした進化系ペレット。
Cryo Hopsと似ていますが、「香りと苦味のバランス」や「ロットごとの均一性」が特徴。
作る側にとっても、再現性の高さが安心ポイントのようです。
➡︎ 最近ではWest Coast IPAでもLUPOMAX採用が増えており、「パンチがあるのに品がいい」仕上がりになっているようです。
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🌿6. Dynaboost®(香りブースター素材)
Yakima Chiefが開発した“香気増幅用”ホップ素材。
中でも注目なのが「チオール香」──白ブドウ、トロピカル、パッションフルーツ系のアロマを、酵母と組み合わせて強化する仕組み。
ペレットとはまったく違う概念で、「香りに魔法をかける補助アイテム」のような存在。
➡︎ 最近のNEIPAやCold IPAなど、「香りで攻めるビール」にピンポイントで使われているらしいです。
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🌿7. HopBurst®(高濃度香気抽出液)
ホップの中でも「とにかく香る成分」だけを集めて濃縮した、超アロマ特化型の液体ホップ。
香りはフルーツや花のエッセンスそのもので、使い方次第でビール全体の印象をガラリと変えます。
狙った香りをピンポイントで付加するために使われるようです。
➡︎ 少量で香りがガツンと来るので、コントロールが重要。NEIPA〜ペールエール系まで応用可能。
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🌿8. Hop Kief(ルプリン粉末)
Cryo Hopsの粉状版とも言える、ルプリンの乾燥パウダー。
そのままふりかけるように使ったり、ペレットと組み合わせて香りを倍増させたり、使い方はかなり自由度が高い。
ちょっとマニアックですが、“生きた香り”を微調整したいブルワー向けのツール。
➡︎ ごく少量で香りのニュアンスが激変。玄人仕様。
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🌿9. HopKick™(チオール香を酵母で増幅)
Dynaboostと同じくチオール香を増やす系の素材ですが、こちらは酵母との“共同作業”で真価を発揮するブースター。
酵母が発酵中に“隠れた香りの元(前駆体)”を分解して、白ブドウやライチ、パッション系の香りに変えていきます。
もはや“香りを育てるホップ”。
➡︎ 「香りが強い」ではなく「香りが進化する」。それがHopKickの面白さ。
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最近よく見かけるようになった、さまざまなホップの形状。
ホップ産業は「単なる隙間産業」なんかじゃなく、世界中のブルワリーを支える巨大産業。
次々に新しいものが生まれ、品質も安定性もどんどん良くなっています。
これからも、追いつかないくらいたくさんの“進化系ホップ”が出てくることでしょう。