(2024年1月22日更新)
🍺ビールの種類
【スタイル】
ビールの種類。製法や材料、地域などの違いによって異なる種類のことを「スタイル」と呼んでいます。「ラガー」「スタウト」「ヴァイツェン」「IPA」など、世界には70種類以上あると言われています。
【ラガー】(下面発酵)
下面発酵酵母により5〜10℃の比較的低温で行う発酵方法で、ピルスナーなどの世界的にも主流のビールスタイルとなっています。
低温のため、雑菌が入りにくいという特徴があります。7〜10日ほどで発酵が終わります。発酵後に酵母が発酵槽の下部に溜まることから「下面発酵」という名前がつきました。
【エール】(上面発酵)
上面発酵酵母により、18〜24℃で行う発酵で、一次発酵(4日前後)と2次発酵(1〜2週間)を行います。発酵後に炭酸ガスと共に酵母が上部で層になることから上面発酵と呼ばれるようになりました。
クラフトビールの主流のスタイルです。
【自然発酵】
空気中や土に生息する野生酵母を使って造る発酵方法で、ベルギーの「ランビック」や、木樽で造る「ワイルドエール」などがあります。
🍺IPAの種類
【IPA】
ビールの「スタイル」の中の1種で、「ペールエール」を更に濃くした印象のビールです。正式には「India Pale Ale」と言います。
❶IPAは更にいくつか細分化されます。液が濁っている「New England IPA」「Hazy IPA」、地域的特徴をもった「West Coast IPA」「Northwest IPA」「English IPA」「Belgian IPA」、乳糖が入っている「Milkshake IPA」、特殊な酵素が含まれる「Brut IPA」、野生酵母を使った「Brett IPA」など多岐に渡ります。
❷更には度数によっても変わります。8%は「ダブルIPA」10%以上で「トリプルIPA」、12%超えで「クアッドIPA」、逆に5%未満は「セッションIPA」などと表現します。
そしてしばしば「❶と❷」が合わさるものも登場します。例えば「New England Double IPA」や、「West Coast Triple IPA」などです。
【IPAの歴史】
18世紀後半、ボウ醸造所が造っていた2年間の貯蔵が必要な「オクトーバービール」と呼ばれる苦味の強いビールがインドで人気でした。
19世紀初頭には“代替り”に失敗したボウ醸造所はシェアを失い、替わりに東インド会社の要請でオールソップ醸造所が「オクトーバービール」を模した苦味豊かなペールエールを開発した、というのがIPAの起源です。
まことしやかに流布している「輸送途中で腐ってしまうのを防ぐために、度数を高めホップを増量した」という都市伝説は、どうやら誤りのようです。
【New England IPA】
アメリカ北東部発祥の、「小麦」と「オーツ麦」を使った白濁したIPAです。よく「Hazy」と混同されますが、正しい定義は存在しません。が、強いて言うならば「強い白濁」「小麦とオーツの使用」「IBU 20程度以下」「多めのドライホップ」の全てが当てはまるのがNew England、それ以外がHazyと言う感じだと思います。
【Hazy IPA】
小麦やオーツ麦を使う、濁りのある、苦過ぎないIPA。New Englandと混同される場合がある。
【West Coast IPA】
「アメリカンIPAと同じ」とする説もありますが、厳密には『ボディが比較的重く、甘みが残っていて、苦味とのバランスも良く、柑橘を中心としたフルーティな香りが強いIPA』というのが妥当だと思います。
一方、アメリカンIPAは、この要素を含まないもの、と言えるかも知れません。
「Societe / The Pupil」はWest Coast、同じ西海岸のブルワリーである「Sierra Nevada / Torpedo」はAmerican IPA、といったカテゴライズになるのかと思います。
【Northwest IPA】
ワシントン州やオレゴン州のブルワリーが造るIPAに多い、オールドスクールでモルティなIPA。ダンクやパイニーな香りが多く、あまりアロマホップを多くしない製法が取られる。
【English IPA】
オールドスクールなIPAで、あまり華やかな香りはせず、ビタリングホップがメインとなるような、若干モルティなIPA。
【Belgian IPA】
特徴的な「ベルジャン酵母」を使って造られるIPA。スパイシーな印象のものが多い。
【Milkshake IPA】
乳糖(ラクトース)を投入したタイプのNew England IPA。苦味がほとんどなく甘みが強いものが多い。
【Sour IPA】
乳酸菌やフルーツを使用して酸味のあるビールに、アロマホップを投入して造るスタイルのIPAです。
【Brut IPA】
アミログルコシダーゼという酵素を使って糖分を極限までなくして“スッキリした飲み口”になるよう醸造するIPAの事です。
通常酵母は一定量の糖分を食べると活動が弱まってしまいます。しかしアミログルコシダーゼを使用すると、活性が高まり、更に糖分を消化します。この作用によってビールの糖分が低くなっていくというわけです。
【Brett IPA】
ブレタノマイセス酵母という野生酵母を使って造られる、酸味を帯びたIPA。
【Black IPA】
カラメルモルトの配分を多くし、スタウトに近い色合いのIPA。黒ビールのカラメル香とホップの引き出すフルーティさが、不思議な味わいを醸し出します。
【White IPA】
「小麦」を使った“クリアなタイプ”のIPA。
【Cold IPA】🆕
ラガー酵母を上面発酵の温度で発酵させたIPA。IPAの豊かなホップの香りを保つつつ、スッキリした味わいになるのが特徴です。副原料に米やコーンを使ってよりスッキリした味わいにさせるものも多いようです。
よく似たビールにIPL(India Pale Lager)がありますが、こちらは通常のラガーの作り方にホップを大量に使用するのが特徴です。
【Double IPA】
もともとは「Imperial IPA」と呼んでいましたが、“Imperial”の“I”と“India”の“I”の『ダブル・アイ」という事でDouble IPAと呼ぶようになりました。
【Triple IPA】
「ダブル」の上という事でトリプルになりました。度数が10%以上のビールに付けられます。12%以上のものはQuad(クアッド) IPAと呼ばれています。
【Session IPA】
アルコール度数が5%未満のIPAに使われる呼び名です。“Drinking Session=飲み会”から、この名がついたとされています。
🍺醸造関連
【醸造設備】
醸造所の設備には、ざっくり言うと、お湯を入れる「ホットリカータンク」、マッシングを行う「マッシュタン(糖化槽)」、煮彿を行う「ケトルタンク」、麦汁を急速に冷やす「熱交換器」、発酵を行う「発酵タンク」などがあります。
【ABV】
Alcohol By Volumeの略で、アルコール度数の事です。
【IBU】
International Bitterness Unitsの略で、国際苦味単位と訳されています。苦味の成分であるホップに含まれるα酸の量で決まります。ホップは熱を加えると苦味が出ますので、この、「熱を加えたホップの量と煮た時間」によって変わってきます。
【SRM】
Standard Reference Methodの略で、標準参照法と訳されています。数字が多い方が濃いビールになります。淡い黄金色で4未満、アンバーで8、ブラウンエールが16前後、黒ビールで35以上が目安です。
SRMは、光の透過に関する数値です。
【グラビティ】
麦汁の比重の事です。発酵前のものが“Original Gravity”、発酵後のものが“Final Gravity”といいます。Final Gravityの数値が水の比重=1.0に近づくほどボディのない軽い飲み口のビールになります。
Original GravityからFinal Gravityを引いた数値を“0.00738”で割るとアルコール度数になります。従って、「どういうボディのビールに仕上げたいか」というものが、最初からブルワーによって設定されている、という事です。
ブルワーの思考が見えてくる数値です。
【モルト】
麦芽の事です。通常は大麦が使われますが、小麦やオーツ麦、ライ麦なども使われます。
麦芽は「焙燥」と「焙煎」で濃さの調整が行われます。コーヒーのローストのように、カラメルモルトなどの焙煎の濃いモルトは、スタウトなどの黒ビールに用いられます。
【ホップ】
ビールに苦味や香りを付ける重要な役割があります。商品化されているものだけでも300種類程あると言われていて、実験品種を含めたら何百種類あるかわかりません。
しかし、用途別に3種類に大別されます。ひとつは「苦味をつける」のに用いられる『ビタリングホップ、ひとつは「香りを付ける」ための『アロマホップ』。そして、両方使える『デュアルホップ』です。シングルホップで醸造される場合のホップは、このデュアルホップが使われます。
【DDH】
Double Dry Hopの略で、「ドライホップを2度行った」という事です。「ドライホップ」は香り付けを行う行程の事で、発酵タンクに投入されます。これを2度行う事で香りが強くなります。
【SMaSH】
Single Malt Single Hop の略です。1種類のモルトと1種類のホップを使うことで、その材料の特性がわかるという特徴があります。
【バレルエイジド】
出来上がったビールをウィスキー樽やバーボン樽、ワイン樽、シェリー樽などの樽に入れて熟成させる事を言います。樽に入っていたお酒の香りが移り、まろやかさが増してきます。