今日は、あまり知られてないアメリカの「醸造家協会」についてお話ししましょう。
1980年代以前のアメリカのビール産業は、Budweiserなどの大手の寡占状態でした。
当時、小規模ブルワリー(クラフトビール)は数も少なく、規模もバラバラ、情報も技術もバラバラという状態で、「小規模な醸造家同士の横のつながり」が必要となってきました。
そこで、1978年にAmerican Homebrewers Association (AHA)と、Association of Brewersが誕生しました。そして2005年に、この2つを統合して作られたのが「Brewers Association」(以下、BA)です。
BAの役割はというと、
❶技術支援と教育
• 醸造技術、衛生管理、ラボ、品質管理などのノウハウ共有
• 「Craft Brewers Conference(CBC)」の開催
• 技術文書・統計データ・業界ガイドブックの発行
❷クラフトビールのプロモーション
• 「Independent Craft Brewer Seal(独立系クラフトマーク)」の運営
• クラフトビールの認知拡大と消費者教育
❸業界統計と分析
• 市場データの提供(売上、スタイル別シェア、ブルワリー数)
• 年次報告書・業界ランキング
❹ロビー活動
• 酒税、輸送、州法制の改善に向けた働きかけ
• 「クラフトブルワリーが事業として継続できる環境づくり」
と、とても多岐にわたります。
2024年時点でのBAの会員数は、醸造所会員が約5,400社、個人会員(主にホームブルワー)が約30,000人いるそうです。
全米のブルワリーが9500社あると言われているので、半数以上が加入する巨大な組織であるといえます。
大手の支配下でない独立系であること、年産600万バレル(約70万kL)以下であること、という【クラフトビールの定義】に当てはまるかが加入条件のようです。
国内外の関連者も参加可能で、日本の一部輸入業者や醸造家も接点があるようです。
BAは、「Great American Beer Festival(GABF)」を主催しています。また、世界最大規模のビールコンペ&試飲イベントを行ったり、「Style Guidelines」(ビアスタイルの公式定義)を毎年更新していて、世界中のコンペがこの定義を参照しているそうです。
BAは、単なる組合ではなく、クラフトビール文化そのものを支える屋台骨と言えるでしょう。
醸造家の技術、商売、思想を横でつなげ、縦で深める、といったことを具現化している、クラフトビール造りに欠かせないものになっているようです。
日本にも「日本地ビール協会」ってのがあるみたいですが、これが諸悪の根源になってやしませんよね、って感じます。知らんけど。