File No.11「アルファ酸って何?」
昨日はIBUの話をしました。ホップの苦味やIBUの話をすると、必ず出てくるのが「アルファ酸(α酸)」。
これはホップに含まれる化合物で、ビールの苦味成分の元になるものです。
でも、ホップをそのまま入れても苦くなりません。ポイントは 煮沸。
60分ほど煮込むことで、アルファ酸は「イソアルファ酸」に変化(=イソメリ化)し、これが苦味をもたらします。
ブルワーさんたちは、ホップごとの数値を見て、どう使うかを設計します。
ここで重要なのは3つ
「アルファ酸」「ベータ酸」「コーヒュムロン」。
それぞれ説明していきましょう。
▶︎ アルファ酸 (α‑酸%)
ホップに含まれる“苦味のもと”。数値が高いほど、ビールに苦味を与えやすい。
▶︎ ベータ酸(β‑酸%)
香味に寄与する成分で、苦味にはほぼ関与しない。
数値が高すぎると、酸化による不快な香りが出ることも。
低いと安定して使えるが、香りのインパクトはやや弱い。
つまり「使い分け」が大事な要素。
▶︎ コーヒュムロン (Co‑Humulone)
アルファ酸の中でも「鋭い苦味」を与える成分の比率。
数値が低いほど“まろやかな苦味”になるとされている。
ということで主要ホップの含有量を見ていきましょう。
● Citra
• リリース年:1990年代初頭
• 特徴:グレープフルーツ、ライム、トロピカル。高アルファでも苦味はやや厳しめ
• 用途:ビターリング&アロマ
• α‑酸:10–15%
• β‑酸:3–4.5%
• コーヒュムロン:20–35%
● Simcoe
• リリース年:2000年
• 特徴:Bright citrus flavors with earthy undertones, aromas of grapefruit, pine and herbs
• 用途:ビターリング&アロマ
• α‑酸:12–14%
• β‑酸:4–5%
• コーヒュムロン:15–20%
● Mosaic
• リリース年:2012年(HBC369)
• 特徴:マンゴー、松、柑橘、ハーブ。トリプル用途。
• 用途:ビターリング&アロマ
• α‑酸:11.5–13.5%
• β‑酸:3.2–3.9%
• コーヒュムロン:24–26%
● Chinook
• リリース年:1985年
• 特徴:Bouquet of pine and spice
• 用途:ビターリング&アロマ
• α‑酸:12–14%
• β‑酸:3–4%
• コーヒュムロン:29–34%
● Cascade
• リリース年:1972年
• 特徴Floral, with elements of citrus and notes of grapefruit
• 用途:ビターリング&アロマ
• α‑酸:4.5–8.9%
• β‑酸:3.6–7.5%
• コーヒュムロン:33%-40%
● Centennial
• リリース年:1990年(開発1974年)
• 特徴:土っぽさと花、柑橘。スーパーカスケードとも呼ばれる。
• 用途:ビターリング&アロマ
• α‑酸:9.5–11.5%
• β‑酸:3.5–4.5%
• コーヒュムロン:28–30%
● El Dorado
• リリース年:2010年(開発2008年)
• 特徴:Flavors of tropical fruit, pineapple, mango. Aromas of pear, watermelon, stone fruit and candy.
• 用途:アロマ
• α‑酸:13–17%
• β‑酸:7–8%
• コーヒュムロン:28–33%
● Magnum
• リリース年:1980年
• 特徴:Clean bittering, light citrus flavor
• 用途:ビタリング
• α‑酸:10–14%
• β‑酸:4.5–7%
• コーヒュムロン:24-33%
● Galaxy
• リリース年:2009年(テスト開始2000年代初め)
• 特徴:シトラス、ピーチ、パッションフルーツ。香り豊か。
• 用途:ビターリング&アロマ
• α‑酸:11–16%
• β‑酸:5–6.9%
• コーヒュムロン:32–42%
● Nelson Sauvin
• リリース年:2000年
• 特徴:Smooth bittering, rich, fruity, gooseberry and white-wine flavors
• 用途:ビターリング&アロマ
• α‑酸:12–13%
• β‑酸:6–8%
• コーヒュムロン:24%
いかがでしょうか。
知ってるホップの数値を見ると、なんとなくキャラクターが見えてきませんか?