(3)一般病棟
6階の一般病棟に移ってきた。やっと初めて「見慣れた」病院っぽい風景を見た。
「そうそう、こういう感じ」
ここに来たら自由度が増すかと思ったが、尿管はつながったまま、降圧剤の点滴もそのまま、おまけにその降圧剤が漏れまくって瘤のように皮膚が隆起している。相当な痛みを伴って。
とりあえず携帯を見ながら過ごすのだが、やはり尿管が気になる。尿が出ている気がしない。
しかし幸運にも翌日、尿管と降圧剤の点滴を外すとこに成功した。
残る管は「酸素チェック」と「普通の点滴」のみ。
トイレを許可されたが「必ず看護師を呼ぶように」といわれた。
でもね、回数がおおいんですよ(汗)
最初は言われた通りナースコールを押したが、勝手が分かるにつれ「ひとりで行ける」感が募っていく。
というわけで、およそ30時間中、3回ほど勝手にトイレに行った。
密かな達成感も味わえるスリリングな行為だ。
そして、無事にすべての管が取れ、【病棟内自由行動】の称号を与えられた。
何たる名誉なことか!
私はすべての患者の頂点に君臨しているかのような、勝ち誇った気分になれた。
しかし、自由とは残酷なもの。病棟内の自由を遥かに凌駕する【病院内自由】という最も最上級の爵位もあると聞かされてうなだれる私。なんとその爵位を与えられると「1階にあるコンビニに自由に出入り出来る」のだという。
やはり上には上がいるものだ。
私はその爵位の取得のため、朝夕惜しまずリハビリに励んだ。
そして、ついに爵位?と思われたときに、思わぬ言葉を聞いてしまう。
それは「外出許可」の相談をしたとき。
3月20日に行われる「IPA本舗・代理開店」のイベントに参加したくて外出願いの相談をしたら、なんと「退院できるかも」という話になったのだ。
仮釈放ではなく【出所】である。
これは寝耳に水。テンション爆上がりである。
爵位を通り越していきなり王位に就くようなものだ。
すでに主治医の許可は下りていて、あとはリハビリのトレーナーの許可が下りれば
とのこと。
その翌日、しっかりテストを受け合格し退院となったのです。
8日に入院して19日に退院なので、12日間。約2週間、あっという間に過ぎていったというのが率直なところだ。
そんなに長く店を空けてしまうことになるなんて、という後悔が先に立つが、「最小限での復帰」ともいえる。
こんなもんですんで本当に良かった。
とはいえ、左半身の痺れは丸々そのまま残っており、これからのセルフリハビリが重要なのは間違いない。
この痺れくんとは長い付き合いになるのだろう。早く去ってほしいが、どうやら彼はしつこそうなストーカーだ。
つづく