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AI小説「IPA本舗」第4話

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〜第4話「新たなチャレンジ」

金曜日、IPA本舗の開店直後。青山は通常通り店内の整理をしながら、昨日の電話で受けた『West Coast Revelation』の入荷問題を頭から振り払おうとした。しかし、どうしてもそのことが頭から離れなかった。

『West Coast Revelation』は、今や話題のビールで、リリースが1ヶ月後に控えている。青山の店でも、かなりの期待を寄せられており、事前に告知していたため、すでに多くの顧客が待ち遠しく感じているはずだった。だが、昨日の電話で伝えられた事実は青山を深く悩ませていた。冷蔵の問題で、リーファーコンテナの不具合によりビールが劣化し、出荷が取りやめになるかもしれないという。

「ああ、これはまずい…」青山はため息をつきながら、グラスを拭いた。

そんな時、ドアのベルが鳴った。東京から久しぶりに来た常連客・井の頭だった。井の頭は口数が少ないものの、ビールに対しては深い知識と愛情を持っている人物で、青山にとっても頼もしい客だ。

「お久しぶりです、青山さん。」井の頭は少し照れたように言った。「West Coast Revelation、もう少ししたらリリースされるんですよね。楽しみだなぁ。」

青山は一瞬、井の頭の期待を感じ、胸が痛んだ。だが、今はそれを隠して、冷静に答える必要があった。

「実はですね…その件でちょっと問題があって…」青山は声を潜め、井の頭に事情を説明し始めた。

「インポーターから連絡があったんですけど、輸送中のリーファーコンテナの不具合で、ビールが冷蔵されずに劣化してしまった可能性があると…」青山が言い終わると、井の頭の顔が一瞬で曇った。

「え、そんなことが…」井の頭は驚きと失望の入り混じった表情を浮かべ、しばらく黙っていた。「せっかく楽しみにしてたのに…こんなこともあるんですね。」井の頭は苦笑いを浮かべながら、青山に向かって軽く頭を下げた。「でも、まあ、ビールの世界ってこういうこともありますからね。」

青山はそれを聞いて、少し気が楽になった。井の頭は失望しているものの、決して責めるわけではない。それは青山にとって、ありがたいことだった。

その後、井の頭はしばらく店内を見渡し、カウンターに腰を下ろした。青山は静かに一杯を注ぎながら、再度頭の中でビールの再現方法を考え始めた。

その時、電話が鳴った。青山は一瞬驚いたが、すぐに受話器を取った。

「ABCトレーディングの高橋です。」電話の向こうから、高橋の声が聞こえた。

「青山さん、すみません…あの件、やっぱりダメでした。リーファーコンテナの不具合で、冷蔵されていなかった全量が劣化してしまって。これ、完全に出荷停止です。」高橋の声は、まるで青山に申し訳なさそうだった。

青山は軽く息を呑んだが、冷静に返事をした。「わかりました、ありがとうございます。」そして、電話を切った。

電話を終えた青山は、井の頭の方を見ながら、少し深くため息をついた。井の頭が気づかないように、少し笑顔を作りながら、「本当に、こんなこともあるんですね。」と声をかけた。

井の頭は軽くうなずき、「まあ、こうやってビールの世界に入った以上、こういうハプニングにも慣れないといけないんですよね。」と言った。その言葉には、あたかもビールを深く愛する者としての覚悟が込められていた。

その時、ドアが再び開き、南田が現れた。海外出張から戻ったばかりの南田は、スーツケースを手にして疲れた様子だ。南田が青山に気づき、軽く手を振った。

あれ?3日くらい前に店に来てなかったっけ?

「お疲れさま、青山さん。出張も終わったので、ちょっとお土産を持ってきましたよ。」南田はスーツケースを開け、そこから一本のビールを取り出した。

青山はそのボトルを見て、驚きの表情を浮かべた。それは、まさしく『West Coast Revelation』だった。

そんなバカな・・・

「まさか、現地で手に入れたんですか…?」青山は信じられない思いで尋ねると、南田は満足げに頷いた。

「もちろん。どうしても飲みたくて。自分用だったんですが、せっかくなのでみんなでシェアしましょう。」

っていうか、“発売中止”を南田に言わなくて良いの? 南田は入荷するものと思ってるんじゃないの?

井の頭も興奮した様子で、「本物の『West Coast Revelation』!本当にありがたいですね!」と声を上げた。

南田が持ち込んだ『West Coast Revelation』をグラスに注ぐと、店内に芳醇な香りが広がった。しばし皆がその香りを楽しみ、そして一口含むと、驚きの表情が一斉に広がった。

青山はその瞬間、心の中で決意を固めた。もしかすると、今後のために自分の手で再現できるようなビールを作らなければならないのだと。その思いが心の奥深くに芽生えてきた。

⭐️

「これは…本当に、すごい。」井の頭が思わず声を漏らした。

青山もその一口で感動した。8.5%のダブルIPAらしい、力強いアルコール感とホップのアロマが見事に調和している。特に、CitraとColumbusのホップが生み出す柑橘系の香り、そしてどこか松っぽいニュアンスも感じられる。全体的に、リッチで複雑な味わいながらも、飲みやすさを保っている。まさに「リトルシムトラ」と言っても過言ではない。

「噂以上だ!」と井の頭が感嘆の声を上げ、南田も満足げに頷いた。「いや、これなら納得だ。」

青山はそのビールを味わいながら、心の中で再現のビジョンを膨らませていった。FG(Final Gravity)は1.09くらいだろうか。アルコール感を高めるためには、もう少し糖分を残さないといけない。

アルコール感じゃなくて「ボディを高める」ですね。アルコール感高めたい人っていないと思う(笑)

ホップはCitraとColumbus、そしてNelsonのようなフルーティーで若干草っぽい印象も感じられる。松とダンク、ケトルでのホップワークが肝心だろう。あとはドライホップは軽めにCitraのみで。何度もそのフレーバーを味わいながら、青山はひとつひとつ再現のステップを心の中で練り直していく。

「いや、これは絶対に再現しなきゃ。」青山は心の中で誓った。

その時、ドアが開いて隼人が入ってきた。いつものようににこやかに、そして少し遅れてやって来た隼人は、周りの雰囲気を感じ取ると、すぐに状況を把握した。

「お、みんな楽しそうに飲んでるな!」隼人はグラスを持ちながら、少し残念そうな顔をした。「俺、ちょっと遅かったか?」

「いや、ちょうどいいタイミングだよ。」青山は微笑んで、隼人に向かってグラスを差し出した。「ちょっとだけ残ってるから、飲んでみて。」

だが、その瞬間、井の頭が横から声を上げた。「ちょっと待って、青山さん!そのグラスは、青山さんのだよ!私のを飲んでください!青山さんはこのビールを吟味するべきです!」

井の頭は、まるで青山を守るかのように声を強くした。青山は驚きながらも、井の頭の思いを汲んで、笑顔で頷いた。

「ありがとう、井の頭さん。でも、これもシェアするんだ。」青山は少し照れくさそうに言った。

「シェアするんじゃない、吟味して。」井の頭は真剣な表情で言い直し、少し無理に笑顔を作った。

「そうか、じゃあ遠慮なく。」青山はグラスを受け取ると、隼人に向かって一歩後ろに下がり、井の頭のグラスを手に取った。

👿隼人さん、これじゃ、貰いにくいよねぇ💦

隼人はしばらく静かに見つめた後、「ありがとう。でも本当に、これ、完璧だな。」と言って、グラスを受け取った。

その後、しばらくは全員で『West Coast Revelation』を楽しみながら、ビールの話に花を咲かせた。青山は再現に向けて更にアイデアを膨らませ、皆はその深い味わいに感動し、軽く笑いながら次の一杯を注いでいた。

⭐️

21:00を過ぎる頃、井の頭はすっかり酔っ払っていた。彼は最後までIPA本舗にいたかったが、東京行きの電車の時間が迫っていることを思い出すと、少し焦った様子で立ち上がった。

「そろそろ行かなきゃ…」井の頭は言いながら、立ち上がったものの、足元が少しふらついている。「でも、今日は本当に楽しかった、青山さん。」

青山はにっこりと笑って「無事に帰れるようにね」と言う。隼人も軽く手を挙げて、「また東京で会いましょう」と言った。

「ありがとう、皆さん…」井の頭は小さく頭を下げて、店を後にした。

店内には南田、隼人、裕子、沖、新規のカップル、そしてやや遅めにやってきたパクが残り、会話が続いていた。木曜日だというのに、店内は賑やかで、まるで週末のようだった。

「井の頭さん、あんなに楽しそうにしてたのに…帰る時間が来ちゃったな。」裕子が少し寂しそうに言う。

「でも、またすぐに来るんじゃないかな?」沖がにやりと笑いながら答えた。「東京からだとすぐ来れるし。」

その後も、皆はビールを手に持ちながら談笑していたが、やがて閉店時間が迫ってきた。青山はラストオーダーを確認し、最後にお客様へ「今日はありがとうございました」と声をかける。

そして21:49、店の時計が静かに時を刻んだ。常連たちはそれでもあまり帰る気配を見せず、まだ少しずつグラスを空けていた。

その時、スマートフォンが鳴った。青山が画面を確認すると、井の頭からのLINEだった。

「間違えて“逆”の電車に乗っちゃった」

青山は思わず画面を見返して、何かの冗談だろうと思ったが、続けてメッセージが届いた。

「盛岡行きの新幹線💦。乗ってすぐに気づいたけど、盛岡まで降りられない…」

青山はすぐにその内容を店内に伝えると、店内は大爆笑に包まれた。

「盛岡!?それは大変だ!」隼人が笑いながら言った。「そのまま行くのか?!」

「降りられないってどういうこと?」沖が笑いながら突っ込む。

パクは言葉を詰まらせながらも、「でも、盛岡行きって…それ、結構遠いぞ?」と冗談交じりに言う。

「でもさ、盛岡で何か美味しいビールが待ってるかもしれないよ?」南田が冗談を交えて言うと、またみんなが笑い声をあげた。

「井の頭さん、どうするんだろうな、このあと。」裕子がにやにやと笑いながら言った。「でも、逆に盛岡のビールとか飲みたくなっちゃうかもね。」

なりません!絶対!!

「まあ、東京に戻ってきても、きっとまた来てくれるだろうしな。」青山は穏やかな表情で答える。「帰る時には盛岡のビールでも堪能してきてほしいね。」

だから!飲まないって!!

店内は、井の頭の「逆電車」事件を笑いながら、ゆっくりと夜が更けていった。閉店後、少しだけ残っている常連たちと共に、IPA本舗の温かい空気が感じられる瞬間だった。

このドラマは「逆電車事件」以外はフィクションです(笑)

【登場人物】

青山・・・IPA本舗店主

井の頭・・・常連客/東京の会社員

南田・・・常連客/一流企業社員

日下隼人・・・常連客/医師

裕子・・・常連客/スーパー店員

沖・・・常連客/IT企業社員

高橋・・・輸入業者ABCトレーディングの社員