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AI小説「IPA本舗」第16話

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第16話「佐川の疑惑」

IPA本舗の開店前、青山は店のカウンターに座りながら、佐川の名刺を見つめていた。昨夜、裕子から「逮捕歴」の話を聞いて、モヤモヤが晴れない。

意を決して、佐川に電話をかけた。数コールの後、佐川が出る。

「青山さん、どうかしました?」

青山は率直に切り出した。「単刀直入に聞きます。佐川さん、あなた、過去に逮捕されてますよね?」

数秒の沈黙の後、佐川が静かに答えた。「…その話をどこで?」

「昨夜、調べたんです。知人が偶然見つけました。」

「そうですか。」佐川は小さく息をつき、落ち着いた声で続けた。「隠すつもりはなかったけど、過去の話をいちいち説明するのもな、と思いまして。」

「詳しく聞かせてもらえますか?」

「わかりました。正直に話します。」

「今の大手ファンドに入る前、私は自分の投資会社をやっていました。共同経営者がいて、彼と二人で立ち上げた会社でした。そこそこ上手くいっていたんですが、あるとき、彼が勝手に怪しい案件に手を出していたんです。」

「怪しい案件?」

「簡単に言うと、投資詐欺まがいの案件でした。高配当を約束して資金を集める、いわゆるポンジ・スキームみたいなものです。私は知らないうちに、会社全体がそれに巻き込まれていました。」

青山は眉をひそめた。「それで逮捕された?」

「そうなんです。共同経営者だったので。会社が摘発されたとき、私も責任を問われました。もちろん、裁判では私が直接詐欺行為をしていたわけじゃないと証明されましたけど、それでも経営者の一人としての責任は重かったわけです。結局、執行猶予付きの判決を受けて、投資業界からは一度身を引きました。」

「それで?」

「しばらくは何もせずに過ごしてました。でも、去年になって、昔からの友人が私を呼び戻してくれました。今のファンド会社の幹部をやっていて、『もう一度やり直さないか』って誘ってくれました。だから今の職についてるってわけなんです。」

青山は少し考え込んだ。「なるほど…話はわかりました。でも、正直言って、完全に信用できるかどうかはまだわからない。」

「それは当然でしょう。」佐川は苦笑した。「でも、だからこそ、私は今回のプロジェクトで結果を出したいと思っています。私個人の名誉を回復するためではなく、日本のクラフトビール業界に本当に新しい風を吹かせたいんです。」

「そこまで言うなら、ひとつだけ聞かせてください。」

「なんでしょ?」

「なぜ、俺なんです?」

佐川は少し黙った後、静かに答えた。「青山さん、あなたは本物だからです。私はクラフトビールの世界に深くいるわけじゃないですが、IPA本舗を見て、あなたのビールに対する姿勢を知って、確信しました。あなたとフレッドが組めば、日本のクラフトビール業界は変わる。私はそれを手助けしたいんです。」

青山はゆっくりと息を吐いた。「…わかりました。ただ、慎重に進めます。すぐに決断はしません。」

「それで結構です。私も焦らせるつもりはありません。ただ、話だけは進めさせてください。」

その日の夕方、再び佐川から電話がかかってきた。

「青山さん、もうひとつ話しておきたいことがあります。」

「何です?」

「仙台の『一番町ブルワリー』が売りに出てるのは知ってますか?」

👿それ、モデルのブルワリーがありそう(笑)

「なんとなく話は聞いてる。」

「私が調べたところ、設備ごと買えるみたいなんです。新しく醸造所を立ち上げるよりずっとコストが抑えられるし、立地も悪くない。ここを拠点にすれば、IPA本舗のブランドをさらに広げられるんじゃないかと思いまして。」

青山は腕を組んで考えた。「面白い話ではありますね。ただ、俺だけじゃなくフレッドの意向もある。」

「もちろんです。だから、一度しっかり現地を見て、考えてほしいと思いました。」

「…わかりました。まずは物件を見てみます。」

「ありがとう、青山さん。後悔はさせません。」

青山は電話を切り、しばらく考え込んだ。佐川の過去を知った今、この話に乗るべきかどうか。慎重に進める必要があるが、可能性は確かにある。

この計画、本気で考えてみるか…?

青山の胸に、新たな選択肢が浮かび上がった。

⭐️

青山は佐川との電話を切った後、一晩じっくり考え込んでいた。佐川がファンドを通じてクラフトビール市場に投資をしたいという話は、青山にとっても一種の挑戦でありチャンスだった。しかし、ファンドが絡むことへの不安も拭えない。利益を最優先されると、自分が守りたい「クラフトビールの文化」が失われる危険性があると感じていた。

翌日、IPA本舗に佐川がやって来た。青山は落ち着いた様子で佐川を迎えるが、店内には常連客の隼人や佐々木夫妻、涼子もいて、二人の話に自然と耳を傾けていた。

青山は早速切り出した。「佐川さん。ファンドがこの話にどう関わってくるのか、もう少し詳しく教えてください。」

佐川は真剣な表情で話し始める。「青山さん、私が話しているのはただの『投資』じゃない。日本のクラフトビール市場を本気で盛り上げたいんです。この業界はまだポテンシャルを十分に引き出せていない。特に地方には魅力的なビールを作れる人がいるのに、資金や流通の壁で埋もれてしまっている現実があります。」

佐々木が横から口を挟む。「それって、青山さんみたいな人材を活かしたいってこと?」

佐川は頷いた。「そうです。青山さんのような実力者が拠点となれば、地方から日本全体に発信できる新しいクラフトビールの文化が生まれる。僕たちファンドはそれを支える資金とネットワークを提供したいんです。」

青山は眉をひそめる。「でも、ファンドが絡むと利益追求が優先されるんじゃないですか?本当に文化を守る気があるのか、それとも単なるビジネスとして捉えているのか、それが不安です。」

佐川は苦笑しながら答える。「確かに、ファンドというとそういうイメージを持たれますね。でも、私が関わるこのプロジェクトは少し違う。私たちは短期的な利益よりも、長期的に市場を成長させることを目指しています。そのためには、青山さんのような人の情熱が必要なんです。」

佐川は話題を一番町ブルワリーに移す。「仙台にある『一番町ブルワリー』の話をしましたよね。あそこは設備もあるし、立地も悪くない。初期投資を抑えつつ、青山さんのビールをもっと多くの人に届けられる絶好の拠点になると思います。」

青山はまだ半信半疑のまま、「設備が古いとか、立地が観光客向けすぎるとか、問題はないんですか?」と質問を重ねる。

「もちろん、現状の課題はあります。」佐川は冷静に答えた。「でも、その課題をどう乗り越えるかが青山さんの手腕の見せ所だと思いませんか?それに、あなたのビールは味で勝負できる。地元の人たちに愛される場所にできれば、長く続く施設に育つはずです。」

佐川が熱弁を振るう間、常連客たちは静かに聞き入っていた。しかし、隼人が突然声を上げた。「俺、ちょっと前に一番町ブルワリー行ったことあるけど、あそこは正直微妙だったな。おしゃれな感じだけど、ビール自体が普通だったし、地元の人もあんまり行ってない印象だった。」

佐々木も同意する。「確かにそうだね。でも、青山さんがあそこを再スタートさせるなら話は別だ。俺たちだって応援するよ。」

涼子が興味津々で佐川に尋ねた。「で、具体的にはどんなビールを作ろうとしてるんですか?」

佐川は少し困った顔をしながら答えた。「そこは、青山さん次第です。でも、地元の素材を使ったり、日本らしさを取り入れる方向で考えています。」

👿そのコンセプト、ダメ🙅フツーの地ビール屋の発想だよ、それ!

青山は少し考え込みながら、「素材も大事だけど、結局は飲む人たちが楽しめるかどうか。地元のお客さんにどうやって愛されるかがカギになると思います。」

話を終えた後、青山はカウンター越しで佐川と向き合ったまま深く息を吐く。「正直、まだ迷っています。あなたの言っていることが本気なのかどうか、確信を持てない部分もあります。ただ…少し考える時間をください。」

佐川は静かに頷いた。「もちろんです。ただ、一つだけ覚えておいてください。私は、あなたとフレッドのビールが日本の常識を変える可能性を持っていると信じています。」

その夜、青山は一人で「Wallace Line」を飲みながら、一番町ブルワリーでビールを仕込む自分の姿をぼんやりと思い浮かべていた。まだ決断はついていないが、確かに心のどこかで「挑戦してみる価値はあるかもしれない」と感じ始めていた。

【登場人物】

青山・・・IPA本舗店主

佐川隆一・・・投資家

フレッド・ジョンソン・・・ブルワー/Yamagata Brew Pubのオーナー

佐々木俊也・・・常連客/ビルオーナー

柿田涼子・・・常連客/技術職のリケジョで1児の母

日下隼人・・・常連客/医師

続きはまた今度