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AI小説「IPA本舗」第11話

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第11話「Fallaron Plate」

佐川との話から2週間が過ぎた。新作のビール、「Fallaron Plate」のお披露目会には、いつもの常連たちが集まっていた。佐々木夫妻、南田、沖、涼子、三原、赤沼。カウンターの上には、完成したばかりのボトルがずらりと並び、店内にはホップの芳醇な香りが漂っている。

「これが新作か。」佐々木がグラスを覗き込みながら言った。「綺麗な琥珀色だな。」

👿琥珀色じゃないけどね

青山が微笑みながらグラスを差し出す。「ホップのアロマとモルトのバランスにこだわりました。飲んでみてください。」

ひと口含んだ涼子が目を見開く。「これ、すごくいい!飲みごたえがあるのに、最後にスッと消えてく後味が心地いいね。」

「さすが青山さん、またやりましたね。」三原が感嘆しながら言う。

そんな中、カウンターの端で裕子がぼんやりとグラスを眺めていた。彼女の表情がどこか沈んでいることに気づいた涼子が、そっと隣に座る。

「裕子さん、どうかした?」

裕子は小さく笑って首を横に振ったが、すぐに視線を落とし、ぽつりと話し始めた。「…来月から東京に行くの。夫の転勤が決まっちゃって。」

カウンターの会話が一瞬止まり、みんなが彼女の方を向く。

「えっ、東京に?」赤沼が驚いた声を上げる。「そんな急に?」

裕子はゆっくりとグラスを回しながら、「うん…突然決まっちゃって。私も覚悟はしてたけど、やっぱり実際に話を聞くとね…。」

南田が静かに言った。「息子さんは?仙台に残るの?」

👿息子だけ残るのは無いでしょう

裕子は深いため息をついた。「それがね…猛反対してるのよ。友達もいるし、ここの生活が好きで、東京には行きたくないって。家の中がずっとギスギスしてて…正直、私もどうしたらいいのか…。」

沖が腕を組んで唸る。「そりゃあ辛いよな。思春期の男の子だし、環境を変えるのは相当なストレスになるよ。」

「単身赴任の選択肢は?」佐々木の妻、りさがそっと尋ねる。

裕子は苦笑いを浮かべた。「それも考えてる。でも夫は家族一緒が一番だって。私もそう思うけど、息子の気持ちを無視するわけにもいかないし…。」

涼子が優しく裕子の手を握った。「裕子さん自身はどう思ってるの?」

👿そこで手を握るか?

裕子は少しの間、黙っていた。グラスを見つめながら、ゆっくりと口を開く。「正直、東京に行くのは怖い。ここの生活が好きだから…。毎週ここに来るのがすごく楽しみだったの。青山さんのビールを飲んで、みんなと話して…この時間が私にとって、すごく大事だったのよね。」

彼女の目に涙が浮かんでいるのを、誰もが感じた。

青山が静かに口を開く。「仙台に残りたい気持ちが強いなら、無理して決めなくてもいいんじゃないですか。じっくり考えて、息子さんともいっぱい話して…結論は急がなくても。」

「そうよ。」涼子が頷く。「答えを出すのは裕子さんなんだから。」

裕子は目頭を押さえながら、微笑んだ。「ありがとう、みんな。ちょっと気持ちが楽になった。」

グラスを持ち上げると、彼女の顔には少しだけ安堵の表情が戻っていた。

「Fallaron Plate、やっぱり最高ね。」裕子はそう言って、ひと口ゆっくりと味わった。

店内には、優しい時間が流れていた。

⭐️

「ところで」と三原が切り出した。グラスを置きながら、少し興味深そうな表情を浮かべる。「醸造所の話はどうなったんすか?」

「醸造所の話?」佐々木が首をかしげる。涼子や南田も「何それ?」という顔で三原を見つめた。

「ほら、東京の井の頭さんに聞いたんだけどさ。」

「井の頭さんに?」青山は少し驚いた表情を見せたが、すぐに納得したように軽くため息をついた。

「ちょっと相談しただけですよ。」青山はグラスを片手に、ゆっくりと話し始めた。「以前、ある投資家の方からお話をいただいたんです。私のビールに将来性があるって言われて、1万リットル規模の醸造所を作らないかって。」

「1万リットル⁉︎」沖が驚いた声を上げる。「めちゃくちゃデカいじゃないですか!」

「うん、正直なところ、スケールが大きすぎてピンとこないんですよ。」青山は苦笑した。「醸造家でもないのに、そんな規模の設備を持つのは現実的じゃないし…。そもそも東京に拠点を置く話だったんですけど、それも自分としては納得できなくて。」

「東京…」裕子がぽつりと呟く。

「そう、俺はやるなら仙台一択なんですよ。ここでビールを作り続けてきたし、ここが俺の居場所だから。」青山の口調には迷いのない確信があった。

「そりゃそうだよな。」赤沼が頷く。「青山さんのビールは仙台の誇りだよ。東京に行っちゃったら、俺らどうすればいいんだよ。」

佐々木が冗談交じりに言う。「でもさ、やっぱり大規模な醸造所があったら、もっとたくさんの人に飲んでもらえるってことだよね?」

「確かにそうかもしれません。でも俺は…なんというか、今のペースで、自分が納得できるものをじっくり作りたいんですよ。」青山はグラスを見つめながら続けた。「それに、ビールは数じゃなくて質だと思ってるし。」

「青山さんらしいなぁ。」南田が笑う。「でも、もし仙台でできるなら、考えてみたりするんですか?」

「……まぁ、場所とか、設備とか、納得できる条件が揃えば考えなくもないですけど。でも正直、あまりやりたいわけじゃないんですよ。」

青山の言葉に、店内は少し静かになった。誰もが彼の言葉の重みを感じ取っている。

涼子が優しく問いかける。「やっぱり、自分で醸造するのがしんどいから?」

「いや、そういうわけじゃないんです。」青山は首を振った。「今までどおり、いいビールを見つけて仕入れて、こうしてお客さんと楽しむ。これが俺のスタイルなんです。醸造所を持ったら、それが変わっちゃうかもしれないって思うと…やっぱり踏み切れないんですよね。」

「それ、わかるな。」三原がしみじみと呟く。「変わっちまったら、青山さんじゃなくなる気がするもんな。」

裕子がぽつりと言った。「…でも、東京に行くのが嫌な気持ち、なんだか分かる気がする。」

青山は彼女を見つめ、優しく微笑んだ。「裕子さんも、ここが大事な場所なんですね。」

裕子は頷き、グラスを持ち上げた。「うん、やっぱり仙台がいいな…。」

そんな彼女の言葉に、みんなも頷きながら、それぞれのグラスを掲げた。

「とりあえず、Fallaron Plateを楽しもうよ。」沖が明るい声を出す。「こんなうまいビールを作れるんだから、醸造所なんてなくても、青山さんは青山さんでいいんだよ。」

青山は軽く笑って、グラスを傾けた。「そうですね。とりあえず、今日の一杯を楽しみましょう。」

店内は、少し前の静けさが嘘のように、温かな笑い声に包まれた。

【登場人物】

青山・・・IPA本舗店主

三原治・・・常連客/内装業社長

赤沼保・・・常連客/居酒屋勤務

柿田涼子・・・常連客/技術職のリケジョで1児の母

菅原裕子・・・常連客/スーパー店員

佐々木俊也・・・常連客/ビルオーナー(りさの夫)

佐々木りさ・・・常連客/花屋経営者(俊也の妻)

南田・・・常連客/一流企業社員

沖和幸・・・常連客/IT企業社員

続きはまた今度